02 やさしい声

放課後。あと5分で4時というところで、シンはF組の廊下の前に立っていた。もう殆どの生徒は下校しており、教室の中には数名の生徒が残っているだけだ。シンはがらりと扉を開くと、黄色い声をあげる女子生徒たちの声を無視し目的の人物を探し出す。

「おい、キラヤマト」

キラはぼんやりと窓際の一番後ろの席に座っていた。名前を呼ばれたことに気付くと、驚いたようにシンの顔を見ている。キラはカバンを持つと、慌てて廊下に出た。

「ご、ごめん、もう時間だった?」

「また迷子になられちゃ面倒だから、迎えに来てやったんだよ。それよりお前、こんな時間にまだ教室にいて…もしオレが来なかったらどうするつもりだったんだ」

シンがそう言うと、キラはポケットから1枚の紙を取り出した。白い紙に鉛筆で描かれているそれは、どうやら校内の見取り図らしい。

「ルナマリアが描いてくれたんだ。だから、多分大丈夫だと思って…」

「へえ、ルナが」

あの面倒臭がりのルナマリアがそこまでするなんて、とシンは少し驚いた。相当にキラのことを気に入ってるのだろうか。考えるが、ずきり、と頭が痛むだけで何もわからなかった。


わざわざ教師が推薦するくらいだから、そこそこに仕事は出来ると思っていたが、キラはシンの想像を遥かに超えた手際の良さだった。キラは3年だが転入生なため出来る仕事は限られてくる。今日はレイの変わりに生徒に配布するプリントを数点作るよう頼んだのだが、それをあっという間に終わらせて今はレイと一緒に職員室に配布しに行った。

誰もいない室内で、シンはぼーっと天井を見上げた。

今までの2年間は、本当に毎日が同じようなことばかりで、とてもつまらなかった。それもあと1年我慢すれば終わりだが、でもあと1年経てばまた違う場所で、つまらない日常を送ることになるのだろうと思っていたのに。あの日キラと会ってから、何かが変わったような気がしていた。そしてキラが生徒会に入ると言ったとき、シンはそれを確信した。

(…どこで会った…?)

過去に会っているということはほぼ間違いないだろうとシンは思う。キラのことは覚えていないけれど、しかしキラと会うのは初めてではないような気がしてきた。しかし考えても考えても思い出すことが出来ず、シンはただぼんやりと天井を眺めた。



キラが生徒会に入ってから数週間が経つ。しかし毎日通ってもキラが生徒会室の場所を覚えることはなく、4時にクラスに迎えに行くのがシンの日課となっていた。キラはいつも窓際の一番後ろの席でぼんやりと外を眺めているのだが、しかし今日は違っていた。

「つまり、ここを代入すれば、」

「あ、なるほど!解けました。…ありがとうございます。先生、教えるの上手ですね」

そう言ってにこりと微笑んだのはキラだった。微笑まれたアスランも、にこりと笑みを返す。シンが初めて見る光景だった。

キラとアスランは教卓を挟んで向かい合っており、2人で教卓に置かれたノートを見ながら話をしていた。おそらくキラが勉強を教えてもらっているのだろう。そこに、それ以上のものなど何もないのだが。

(誰もいない教室で2人きり、)

シンの頭に、いつぞやのルナマリアの言葉が蘇った。状況的には、まさに今だ。普段は数人程度生徒が残っているはずなのに、今日に限っては誰もいない。2人はシンが来たことに気付いていないらしい。シンはつい扉から離れた。少し遠くに見える2人は、未だ楽しそうに笑いあっている。あのアスランが笑うなんて、とシンは驚いたように彼らを見ていた。が、ふと腕の時計を見ると、もう4時5分だ。

こんこんと扉をノックすると、2人が同時にこちらを向いた。

「あ、ご、ごめん、今カバン持ってくるから、」

シンに気付いたキラは、慌てて教卓の上のノートを片付けると、窓際の自分の席まで戻りカバンを持ってくる。

「先生、ありがとうございました」

「わからないことがあったらまたいつでも聞きにおいで」

にこりとまたアスランが微笑む。ぺこりとお辞儀をして、キラがこちらにやってきた。

「…行かないの?」

キラに問われ、シンは自分がぼんやりとしていたことに気が付いた。慌てて踵を返し、教室から出る。ちらりとアスランの方を見ると、何故か少し悲しそうな目でこちらを見ていて、シンは首を傾げた。


「あんたら、知り合いなの?」

シンにそう問われ、キラはびくりと肩を揺らした。レイは用事があり職員室に行っているから、今この部屋にはシンとキラの2人しかいない。

「知り合いっていうか…シンくんも、数学はザラ先生だよね、」

「そうだけど…。てゆーか、シンくんってやめろ、気持ち悪い。シンでいいよ」

「え、う、うん…。仲良いっていうか、勉強を教えてもらってただけだから、」

「ふうん」

続くキラの言葉はなかった。暫くの間、かたかたとキーを叩く音だけが室内に響く。シンはソファーに座って次の集会の時に話す内容を考えるが、なかなか思い浮かばずペンを手に持て余しながらまた天井を見た。

「…あんたさぁ、アスラン先生とデキてるって噂、本当?」

シンが唐突にそう問うと、がたん、と音を立ててキラがイスから立ち上がった。

「な、なにそれ、そんな、」

「噂だよ、噂。あんたがアスラン先生と放課後よく一緒にいるところを誰かが目撃して、いまじゃあ2人はできてるって話にまでなってるぜ」

「嘘だよ、そんなの、僕と彼が付き合ってるだなんて、あるわけ…」

「ふうん」

素っ気無いシンの返事に、キラは慌ててシンのもとに駆け寄った。

「本当にそんなことないから、嘘だから、」

「わかったって。…別に、そこまで否定しなくても、」

「だって、僕が好きなのは、」

そこまで言ったところで、キラははっと口を噤んだ。いつの間にかシンのいるソファーにまで乗り上げていたキラは、視線を泳がせながら慌ててシンから離れる。が、シンは逃げるキラの腕をぎゅっと掴んで引き寄せた。

「あんたが好きなのは…オレ?」

そう問うシンから眼が逸らせない。キラは口を噤んだままだ。

「ねえ、オレなんでしょ?」

2度目の問いに、近くなる距離に耐えられず、キラはこくりと頷いた。するとシンはぱっと掴んでいた腕を放す。キラは慌ててシンから離れた。

「だから生徒会に入るなんて言い出したのか」

「…そうだよ、僕が好きなのはキミだよ。生徒会に入った理由だって、それだ。…試用期間中に気付けてよかったね。すぐに僕を辞めさせることが出来る」

「本当にオレのこと好きなの?なんで?」

「好きだよ。好きだから、好きなんだ」

「ふうん」

今度はシンがソファーから立ち上がり、傍らに立っているキラに近づいた。キラはすぐにでもやってくるであろう拒絶の言葉に、ただ立ち尽くすことしか出来ずじっとシンを見ている。シンはぐっとキラの両腕を掴んだ。

「いいよ、じゃあ付き合おうか」

「…え?」

予想外なシンの言葉に、キラは呆然とシンを見た。てっきり拒絶されるものだとばかり思っていたのに。普段は絶えず笑みの浮かぶキラの表情は、今は困惑の色一色だ。シンはそれがおもしろくて、くすりと笑いながら言う。

「オレのこと好きなんだろ?オレもあんたのこと好きだよ」

口だけにこりと微笑んで、燃えるような赤い瞳でシンは言う。嘘だ、とキラは思ったが、でもそれでもいいと思った。キラが無言で頷くと、シンはさも当然と言わんばかりの表情で笑った。



(僕のことを好きだという、彼の言葉を僕は嘘だと思った)

それなのに、それからのシンはとても優しかった。まるで本当に付き合っているみたいだと、恋人同士のようだとキラは思った。

昼休み、キラが窓際の席でぼんやりと外を眺めていると、がらりと突然扉が開き顔を出したシンに呼び出された。キラは男女共に人気は高かったが、しかし休み時間等はいつも一人で座っていた。皆、キラに近寄り難かったのだ。唯一キラと普通に接すことの出来るルナマリアは、昼休みも部活の練習があるため教室にはいない。

「あんた、弁当一人で食べてんの?」

問われ、キラは頷いた。するとシンは、キラの腕を掴み歩き出す。

「ど、どこ行くの?」

「生徒会室」

そう言われ連れていかれた生徒会室では、ソファーに座りレイが弁当を食べていた。

「どうも、こんにちは」

「あ、こ、こんにちは、」

「お茶入れてきますね」

そう言ってレイは立ち上がる。シンはキラをソファーに座らせると、勝手にキラのカバンを開いて弁当を取り出しテーブルに乗せた。

「あ、あの、」

「明日から昼休みも迎えに行く。一緒に食った方が良いだろ」

こくりとキラは頷いて、弁当の包みを開いた。戻ってきたレイからお茶を受け取ると、キラも弁当を食べ始めた。


放課後もシンは教室まで迎えに来て、2人で一緒に生徒会室まで向かった。もうすぐ行われる新入生の歓迎会の所為で、仕事は山ほどあった。漸く人段落ついて時計を見ると、時刻は8時。続きはあた明日ということになり、荷物をまとめると3人は部屋を出た。

キラは一人でぼんやりと玄関口に立っている。外は雨だ。本来なら徒歩で帰れる距離なのだが、生憎キラは傘を持っておらず、バスで帰ることにしたのだ。バス時刻まで、あと15分はある。シンは寮だから、もうとっくに帰ってしまったのだろう。

ぱしゃぱしゃと足音が聞こえたようなきがして、キラは顔を上げた。しかし外は暗闇で何も見えない。時計を見ると、あと数分でバスが来る。そろそろバス停に向かわないと間に合わないだろうと思い、キラが玄関から出ると。

「おい、キラ!」

遠くから叫ぶ声が聞こえ、キラは驚いて振り返った。ぱしゃぱしゃと足音をたてて、シンが走ってくるのだ。その手には傘が握られている。服装は未だ制服のままだ。

「お前、何やってんだよ!傘は?」

「傘、忘れて…バスで帰ろうと思って、」

「なんで早く言わねーんだよ」

シンはキラの腕を掴むと、雨で濡れてしまったキラをひっぱり自分の傘の中に入れる。キラは突然のことに何がなんだかわからずぼんやりとシンを見ていた。

「傘無いなら言えよ。あーあ、もうずぶ濡れだ。ほら、行くぞ」

「え、でも、」

キラが遅れて傘からはみ出ないよう腕を引っ張りながら、シンは歩き出す。それはバス停とは逆の方向で、キラは慌てて声をあげた。するとシンは、首を傾げて問う。

「あんたの家、あっちであってるだろ?」

「あってるけど、…でも、」

「送ってやるって言ってんだよ。あんたんち、近いし」

シンの言葉に、キラは困ったように首を振った。

「でも、歩くと結構遠いし、それに、こんな時間だし…」

「大丈夫だって。オレ男だし。まあ、あんたも男だけどさ。絶対に嫌だって言うんなら、無理して送らなくてもいいけど、」

キラはぶんぶんと首を振った。シンがそう言ってくれるのはとても嬉しい。嬉しいのだけれど、無償に注がれるこの優しさがどうしても耐えられないだけだ。自分はシンを好きだといった。この想いに偽りなどない。けれどキラは、シンがそうまでして自分に優しくしてくれる理由がわからないのだ。

(彼は多分、僕のことは好きじゃあない)

キラは密かに確信していた。理由はない、が、彼が自分を好きになるような理由も無い。シンはまだ、何も思い出していないのに。

「ほら、行くぞ」

ぐっと手を引かれ、キラは頷き歩き出した。涙が出そうだ、と思った。

シンが何故自分に優しくしてくれるのか、その理由がキラにはわからない。けれどこのまま、ずっとシンが何も思い出さなければいいと、そう思った。この一瞬の、繋いだ手の温もりの記憶だけで、生きていけると思ったからだ。



あの日、彼の手の温もりを知っておいて本当に良かったと、キラは思った。次の日キラが学校に行くと、そこにシンの姿はなかった。

「どうやら過労みたいです。最近は仕事も多かったし…」

「過労、」

シンのいない生徒会室で、レイは言う。今日も仕事が沢山あったけれど、殆どがシンがいないと出来ないものばかりだったので、2人は手早く自分の仕事を終わらせると、すぐに生徒会室を出た。

「よかったら、お見舞いに来ますか?」

レイの言葉に、キラは躊躇う。寮は基本的に部外者は入れないようになっているが、しかし同じ制服を着ている生徒なら大丈夫だろう。キラが躊躇うのは、自分がシンのお見舞いに行っても良いのか、迷惑ではないのかということだった。

「あなたは、シンと付き合ってるんですよね」

レイがそう問うと、キラは驚いたように顔を上げた。

「どうして、」

「シンから聞きました」

意外だった。てっきり送ってもらったり、お弁当を一緒に食べたりしてるから気付かれただけだと思っていたのだ。まさかあのシンがこんなことを他人に教えるなんて、とキラは首を傾げる。

いつの間にか寮にたどり着いた。しかし未だキラは決心することが出来ず、2人はロビーのベンチに腰を下ろした。

「彼は僕のことを、好きじゃないと思うんだ」

キラがそう言うと、レイは静かに首を振る。

「そんなこと、ないと思いますけど、」

「だって、どうして彼が僕を好きになるの?彼は僕のこと、何も知らないよ。彼は、外見だけで他人と付き合うような人じゃあないでしょう?」

キラの言葉に、レイは頷く。確かにレイも不思議だったのだ。キラが言うとおり、シンはただ相手が美人だからというだけで付き合おうとするような人間ではない。そこでレイはふと疑問を感じ、キラに問う。

「…あなたは、シンを知っているのですか?」

レイの言葉に、キラははっと口を噤んだ。しかしそれが肯定を意味していて、レイはまた首を傾げる。

「シンは知らないと言ってましたが…」

「そうみたいだね。…でも、忘れて当然かもしれない。たった1年だったし、まだ幼かったから」

「本当に、知り合いだったんですね」

キラは頷く。キラの言葉は真実だろう、とレイは思った。しかしレイは首を傾げる。レイが知っているキラは大企業の跡取で、シンはずっと屋敷から出ることは出来ず勉強ばかりさせられていたと言っていたからだ。だとしたらシンは、いつキラと出会ったのだろうか。

「僕はずっと忘れなかった。忘れられなかった。だから、彼があの頃のことを忘れてると聞いても、僕の顔を見たら思い出してくれるかもしれないって思ったんだ」

「聞いたというのは、」

「アスランだよ。彼もシンのことを知っているから」

そう言われ、レイは納得した。入学当初、アスランもシンの顔を見て何か話し掛けようとしていたのだ。おそらくシンはそのことをもうすっかりと忘れてしまっているのだろう。だからこそ、シンがあそこまでキラのことを思い出そうとしている姿が不思議だった。

「彼は思い出さなかった。でもそれでもいいんだ。僕はまた1からやり直そうと思ったんだ。今彼が僕のことを好きじゃなくても、これから好きになってもらえばいいって」

だからシンが自分に優しくしてくれるのが、どうしても耐えられなかった。自分のことを何もしらないシンが、ただ純粋に自分のことを好きになってくれているような気がしたから。

「でも彼は、無理してたみたいだね」

確かに生徒会の仕事は多かったけれど、シンは今まで2年間それを経験してきているのだ。今更それで倒れるなんてことはないだろう。原因は確実に自分だ、とキラは思った。

暫くぼんやりと大きな窓から見える景色を眺めていたが、だんだんと雨が降ってきて、何も見えなくなる。レイは立ち上がると、キラの手を引いた。

「お見舞い、行きましょうか」

こくりとキラは頷いた。


シンとレイの部屋は、他の生徒達の部屋とは少し違う場所にあった。おそらく帰りが遅くなっても迷惑にならないようにこの場所にされているのだろう。扉の前に立ち、レイとキラは立ち止まる。

「おそらくシンは部屋の奥のベッドにいるはずです。オレはここにいますから」

「…ありがとう」

キラはゆっくりと扉に手をかけた。中は薄暗く、レイが手を伸ばしぱちりと電気をつける。キラはちらりとレイの顔を見る。レイはこくりと頷いて、キラを室内に入れ扉を閉じた。


「…キラ?」

奥から声が聞こえ、キラは急いでベッドに向かった。そこにはシンが横になっていて、少し驚いた顔でキラを見ていた。

「ああ、レイと来たのか」

こくりとキラは頷いた。シンはきょろきょろとあたりを見回すが、そこにレイの姿はない。気を使ってくれたのだろうか、とシンは思う。

「悪い、明日はちゃんと行けるから…あ、今日の弁当は、」

「レイくんが、迎えに来てくれて、」

「そっか」

シンはほっと息をつく。もしかしたらずっと自分のことを待っていたのかもしれない、と思っていたからだ。気を利かせたレイが、自分の代わりに全てやってくれていたらしい。

「…なんであんたが泣きそうになってんだよ」

傍らに座るキラの、頬を撫でたシンの手は冷たかった。キラはその手を掴んでベッドの中に仕舞いこむ。瞳を閉じて、深く息を吸ってから真っ直ぐにシンを見た。

「キミがどう思っているかはわからないけど、僕はキミに付き合おうって言ってもらったとき、凄く嬉しかった。キミと一緒にお弁当食べたり、家まで送ってくれたときは、本当に、涙が出るくらい嬉しかったんだ」

シンは何も言わずキラの瞳を見る。キラの瞳は何かを決心しているかのように固い。シンは後に続くキラの言葉が、なんとなく予測できたが何も言わなかった。

「でもそれがキミにとって負担になったなら、僕はもうキミと付き合うことはできない。僕はまだキミになにも返してあげていないけど…でも、これ以上キミといたら、もっとキミに迷惑かけちゃうから、」

「…わかった」

シンがそう言うと、キラは静かに瞳を閉じた。そうしないと、涙が零れてしまうからだ。キラはすっと立ち上がると、振り返らずに問う。

「やっぱり僕のことは、好きにはなれなかった?」

キラの言葉に、シンは驚いたように目を見開いた。キラのことを好きかと問われると、シンは多分わからないと答えただろう。でも、優しくしてあげたいとは思ったのだ。だから出来る限りキラに優しく接したのだが、しかしそれがキラにとっては重荷になっていたのだろう。キラは自分のこの曖昧な気持ちに気付いていたらしい。

「好きだよ」

優しくしてあげたい、大切にしてあげたいと思ったのだ。好きなんて言葉、シンが今まで生きてきた中では殆ど使うことがなかったから、これが本当に好きという気持ちなのかはシンにはわからない。でも、そう思ったこの気持ちは嘘じゃないから、だからシンは好きだと答えた。

キラは向こうを向いているので、表情はわからない。この答えが正解かどうかもわからないけれど、これは真実だ。

キラは何も言わずに部屋を出た。ぱたんと閉じる扉の音を聞き、シンは瞳を閉じた。