・本編後
・シンキラ→ザフト、アスラン→オーブ
・ひとりぼっちのアスラン



知らないふりを続ける男

静かな夜だった。雨も降っていないし、風もふいていなかった。窓をひらいているのに外からの雑音は一切聞こえてこない。

しばらくディスプレイを見ていたため凝り固まった肩をほぐすように、大きく首を回す。ついでに時計に目をやると、もう時刻は夜中の2時をまわったところだった。どうりで静かなわけである。


ディスプレイの脇には木製の写真立て。その中には写真が入っている。シンとキラと、オレが映っている。写真を撮りたい、というと、シンは露骨に嫌がったし、キラも遠まわしにそれを拒否していたが、オレがどうしても、と頼み込んでなんとか承諾を得たものだ。シンもキラも、今はプラントに上がっていて、滅多に連絡をとっていない。写真をとっておいてよかった、と思った。以前もそうだった。大戦が終わってAAに戻ったときに、誰だったろう、カガリだったかもしれない。みんなで写真をとろう、と言い出して、その時はオレもなんで写真なんか、と思っていた。しかしいざ皆と離れ、言いようのない寂しさに襲われた時にはこの写真を見る。写真を見たところで当時に戻れるわけではないが、それでも少しは気分が安らいだ。オレは写真が好きなのかもしれない。壁のコルクボードにも、古い写真を飾っていた。といっても軍に入ってからは写真を撮る機会が少なかったので、ほとんどが幼少のころのものだ。あの頃の。キラと2人で映った写真。


キラもオレのようにさみしいと思うことがあるのだろうか。そしてそれを、写真を見ることによって紛らわせたりするのだろうか。2人は仲よくやっているのだろうか。キラもシンも人見知りが激しいから、きっと苦労していることだろう。オレも一緒に行けたら、と思う。でもそれは多分オレの思い上がりにすぎなくて、2人はオレなんかがいなくてもちゃんと上手くやっているにちがいないのに。


静まり返った部屋に、ポン、と不似合いな音が響いた。メールだ。キラからのメール。いつも通りカガリや皆を気遣う言葉と、そして簡素な業務報告。

オーブは賑やかだ。カガリやメイリンもいるし、モルゲンレーテの人たちも優しい。仕事は大変だが、やりがいはある。寂しくはない。寂しいと感じたことはないのに、なぜオレはまた写真を覗くのか。









それは嫉妬



お題配布元 terzo dito